2010年10月29日金曜日

モンテッソーリ幼稚園潜入

昨日はなおの幼稚園の授業参観だったので,なおままと二人で行ってきた.

他の幼稚園だとどうなのかわからないが,ここでは一日に参観できるのは保護者一組だけ.なので,年少の場合,夏休みあけぐらいからスケジュールが組まれて,一家族ずつ順番が回ってくる.

昨日は待ちに待った我が家の番,ということで張り切って行ってきた.

どうしてこんな風になっているのか,というと,なるべくふだんの様子を見せるため,そして通常の生活を維持させるため,だそうだ.保護者の数が多いと子どもが親の目を気にしてそわそわしてしまうし,ふだんの行動とは変わってきてしまう,ということらしい.

だから,参観する親も,静かにしゃべらず黙って観察することが求められる.部屋の隅に椅子が用意され,そこに座ってじっとじっと様子を見続ける.

「モンテッソーリの幼稚園では自主性を重んじ,『お仕事』と呼ばれる課題を行う」ぐらいの予備知識しかなかったのだが,実際に見てみると,なかなかに興味深い.

部屋に入ってみると,子どもたちは「お仕事」をしていた.これは,知育のようなものがほとんどで,指先の訓練をするもの,ひらがなを覚えるもの,日常生活の動作を覚えるもの,その他色々ある.まあ,遊びのようなお仕事も多く,子どもがそれなりに意義を感じたり,楽しみを感じてできるようになっている.

お仕事をしている子どもは半分ぐらいだろうか.後は,結構ふらふらとさまよっていたり,部屋の外にでてしまったり.

集団で「今はこれをしましょう」というのがないので(たまにあるらしいが),子どもたちは自分がやりたいことを自分で考えて見つけないといけない.これが,私が「モンテッソーリが良いのではないか」と考えた一番の理由だ.

実際には,やりたいお仕事がすぐに見つかるわけではないこともあるらしく,「ふらふら」している子どもも結構いる.

だが,そんな子たちもはしゃいで騒ぎ回るということはない.教室はとても静かだ.もちろん,しゃべってはいけないというわけではないだろうし,ときどき話し声はあるのだが,がやがやとしたおしゃべりに包まれてはいない.

そして,最初はふらふらしていた子どもも,そのうち自分なりにやることを見つけて,自分で準備をし,始め,終わったら片付ける.

針仕事などうまくできた場合は先生に見せる子もいるようだが,基本的に自分の中で完結している.一方,一部のお仕事は先生がぴっちりついている必要があり,そういう子に対して先生は常に寄り添って指導をしている.

自主性を重んじる,というのはかなり徹底されていて,ちょっとやそっとでは先生は介入しない.だから,部屋の外にでてしまっても,すぐに怒られるということはない.なぜ幼稚園の入り口が厳重にゲートで管理されているのかわかった.

場合によっては,特に慣れるまでの1学期は園庭に勝手に遊びに出て行ってしまう,なんていうのも普通のこと.先生の様子を見ていると,しばらくは勝手にさせる.だが,怪我の危険があったり,子どもたちが本当に困ってしまうと,じゃあ,という感じで口を出しに行く.

最初は誰かがビーズを床にばらまいてしまい,4,5人の子どもたちが床に這いつくばってビーズ拾いに勤しんでいた.30分以上やっていたのではないだろうか.子どもたちが何かの目的を持って行動している際には,それはそれで良いということらしい.

2時間で一回だけ,ちょっと幼い感じの子(満3歳で入った子どもかな)が,棚の上によじ登ってしまったことがあった.そのときは一瞬で抱きかかえられて,それが許されないことを言い聞かされていた.

その一瞬,部屋の子どもたちの空気が凍り付いた!教室では,叱られる,という体験があまりないだけに,「やって良いこと」「悪いこと」の区別がはっきりついている,そんな雰囲気だった.なおなど,ふだん,親が「駄目」と言っているのを平気で聞き流すくせに!となんだか不思議だ.

なおの今のブームは縫いさしとビーズ.最初は,体操服を忘れた(我々がカバンに持っていて渡しそびれていた)のと水筒を忘れた(これは忘れた)ので,ぐずぐずしていたらしく,特に何もしないでふらふらしていたのだが,そのうち,縫いさしを始め,それが完成した後はビーズを始め,と順調にお仕事をこなしていた.

ときどき,座っている我々のところにきて,だっこをせがんだり話しかけたりするシーンもあったが,あまり構ってはいけないことになっていたので,放置していたら,すぐに戻っていった.

塗り絵のお仕事もあり,それは台紙の上に白い紙をおいてやるらしい.台紙は,なんかどこかのキャンペーンで配られた無料の塗り絵用紙だった(笑).誰かが以前,その台紙に直接色を塗ってしまったらしく,それで子どもたちが一悶着.「それはいけないのだ」と責める子どもたち,「(だめなんだけど)年少さんがやってしまったのだから,やさしくおしえてあげるべきなのだ」と主張する子どもたち,という感じだろうか.

言い合いになり,わらわらと5,6人の子どもたちがやってきて取り囲んでいたが,そのときも先生は介入せず.まあ,幼稚園児なので,あまり議論は発展せず,言いたいことだけ言うと,そのうち子どもたちは去っていくのだが,その後になって,先生がやってきて,白い紙を載せて上から色を塗りましょう,といった指示をしていく.

***

モンテッソーリが理想の幼稚園のように語られることもあると思うが,長所も短所もある教育方式だと思う.

良く言われる,「協調性が育たない」ということだが,これは「集団で一斉に何かをする」際にすばやく動けない,という意味ではその通りかもしれない.活動ごとにぱっぱっと集まって次はなに,と集団で活動することは,普通の一日ではあまりなさそうだ.

一方で,個別の人間関係,一対一の関係は,普通の幼稚園よりずっと細やかだし,学ぶものも多い.年下の子どもの面倒を見るのは普通のことになるし,何か困ったことがあったら,話し合って解決する,という基本的姿勢が身につく.

モンテっ子は,小学校に入りたてのころには色々と戸惑うこともあるのかもしれないが,集団活動なんてすぐ慣れるので,たいしたデメリットではない,と思っている.

(実際には,運動会の練習などでそれなりに鍛えられるようだ)

長所として私が一番買っているのは,自主性を重んじるところだ.何をやりたいのか,本当に分からなければ入園下手のころは先生がヒントを出してくれることもあるらしいが,自分で何をやるのか見つける,というのが一番大切な第一歩となっている.そのためには,しばらくふらふらクラゲのように部屋を漂っていても構わないのだ.

今,大学を卒業して社会人になった若者に欠けていると言われる力,そして社会が彼らに求めている力の一番大きなものが「自分から動ける力」だと考える向きもあるが,その基礎を身につけて欲しい.

モンテッソーリ教育については,このあたりに画像付で実際のお仕事の紹介がある.

いわゆる普通の幼稚園とは大きく違うので,どうせ行かせるなら,しっかりと教育理念や方針について理解し,納得した上で行かせた方が良いと思う.

***

親子英語関連では,もう幼稚園ではほとんど英語がでなくなっているようで,一安心.友達に英語で話しかけたり,ということもない.一人で木製ビーズにひも通しをしていたときに,独り言のように"Well…"などと言っていたり,英語で一人遊びに突入していたが,まあ,これぐらいならOKだろう.

安心してこのまま家で英語をやっていいのだ,と再確認できたという意味でも,非常に意義のある授業参観だった.

今のところ,いきあたりばったりで多視聴・多読(というほど絵本は読んでないか)で進めている親子英語,もう少しプランを練るべきだろうか,と色々考えている.まあ,しばらくは仕事が忙しいので,ルーティンだけこなしていこう.

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6 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

うちの息子はモンテ園卒でただいま小学2年生です。
おっしゃるように小学校に入って数ヶ月の間は戸惑うことが多かったようです。
特にモンテ園の先生(モンテッソーリアン)と小学校の先生では子どもに対する語りかけの仕方があまりに違うのでそれも大きかったようです。(小学校の先生はその違いに気付いてはいませんね・・・)
きっと子どもなりに自分の力で試行錯誤しながらもうまく対処していくのでしょう。
なお君の成長、楽しみですね。

SAI さんのコメント...

ご無沙汰しております。
今回の記事も興味深く読ませていただきました。
というのも実は近所にモンテッソーリの幼稚園があり「普通のとどう違うのかな?」と思っていたからです。(私の住んでいる地域だけかもしれませんが)カリキュラム的にも一般の幼稚園とは違うため、市の広報にも「幼稚園」として紹介されていないんですよね。

>他の幼稚園だとどうなのかわからないが,ここでは一日に参観できるのは保護者一組だけ
もう、この時点で普通とは違いますよね!丁度昨日次男(幼稚園)の授業参観でした。もちろん保護者一斉です。なおぱぱさんが書いておられるように、子供達はいつも以上にそわそわしていましたよ~。

>長所として私が一番買っているのは,自主性を重んじるところだ.
私も同じ気持ちです。でも今の社会って、「自主性を重んじる」といいながらも「みんなと同じことをしないと周囲に迷惑がかかる」的な日常の矛盾があるような気がします。私も子供ができてから親としての自分のなかに矛盾を感じてしまい、しゃくぜんとしない事が多いです。(なんか分かりずらい文章になってすいません・汗)

ものぐさハハ さんのコメント...

大変興味深く読ませて頂きました。
ちょっと疑問に思ったのが、子供達は1日中、自主性に任せられているのでしょうか。極端に言えば、食事の時間でも、食べたくない遊びたいという子は、それでよしとされているのでしょうか。だとしたら、オン・オフの切り替えやけじめを習得できないのでは?と思ってしまいました。
それとも、食事の時間などみんなで一斉にやる事もあった上で、「お仕事の時間」があってその枠では自主的に行動という事なのでしょうか。であれば、自主性も協調性も一挙両得?と思ってみたのですが、そんな簡単にいかないですかね。。^^;

それにしても「お仕事」というネーミング。。「今日は、お父さんお仕事だから遊べないよ。」って言うときに、塗り絵やビーズ遊びを連想されていたら、イタいですね。^^

パルピ さんのコメント...

モンテッソーリの幼稚園に子供を行かせてるお友達が何人かいて、その教育とはどんなものか気になっていたので、とても勉強になりました。
長所も短所も確かにありそうですね。
でも、自分で考えて行動する力が身に付きそうです。
私の知ってるモンテッソーリ幼稚園のお母さんは、なぜか皆さんジーンズは履きません。
そして、決まってるかのように皆さん、ブラウスにふんわりスカートが多いそうです。

私は、ジーンズをよく履くので、無理だと思いました。汗
モンテッソーリとは無関係で、ただその幼稚園だけなのでしょうか?笑

Cassis さんのコメント...

夏前にモンテ園の見学に行ってきました。
モンテの園って、そこの先生の指導力にかかっているな~と思いました。

> 自主性を重んじる,というのはかなり徹底されていて,
> ちょっとやそっとでは先生は介入しない.

> 怪我の危険があったり,子どもたちが本当に困ってしまうと,
> じゃあ,という感じで口を出しに行く.

いいですね。
ワタシが見学に行ったところは、なんだかずっと先生がお小言を言っていて、「これでモンテ?」と釈然としない気持ちでした。

なおぱぱさんの記事を読んで、なおくんが通っているところは、いい感じなのだな~とうらやましくなっちゃいました。

ところで・・・
日本語環境下でも、独り言は英語なんですね(^^)

なおぱぱ さんのコメント...

>匿名さん

ありがとうございます.
小学校の先生が最初戸惑う,という話も聞いたことがあります.いずれにせよ,すぐに慣れてしまう程度の差だと思います.むしろ個人差の方が大きいでしょう.

>SAIさん

授業参観も「イベント」と割り切ってしまえば,別にそれはそれでアリだと思います.求めるものの違いでしょうか.

今の社会,必要以上に「迷惑をかけない」ことにきゅうきゅうとしているような気がしています.これも個人の価値観ですが.

市の案内などに載っていない場合,「幼稚園」として認められていない,という可能性もあるかもしれません.教育方針によって市が差別するというのはあり得ないので.

でも,その場合は○○幼稚園とは名乗れないはずです.

>ものぐさハハさん

食事は一斉です.自分たちで準備をする,ということもあって,11時半ぐらいから準備を始めていました.

もし食べたくない,という子がいたらどうなるのか.ちょっとわかりません.ただし,お昼の時間以外で食事をしたい,とかは許されないと思います.

横割り活動の時間(言い忘れましたが,教室は縦割りで年少~年長が混在しています)もあって,年長さんが今は運動の時間で全部集まる,などといったこともあります.その時間も,該当する学年の子は有無を言わさず集められます.

私の「お仕事」に関して何を考えているのか,はちょっとわかりませんね(^^; 遊びではなく,かといって「嫌なこと」でもないのだ,という気持ちが「お仕事」には込められているような気がします.

>パルピさん

園に通わせる保護者のみなさんがどんな層が多いのか,というのは地域・園によると思います.うちの園は,スカートもいるけれど,ズボンもいる,そうです.割と普通のお母さんが多いですね.うちはズボンです(^^) 

>Cassisさん

小言を言う,というのは全然モンテらしくないですね.

先生と園の指導力という面は大きいと思います.「みんなで集まってお絵かき~」とかわかりやすい構造がないので,普通の園よりそのあたりは気をつけないと行けないと思います.

参観でふだんの様子を見た限りでは,落ち着いて集中力のある子を育てる,という感じでした.

英語は,友達との間で出なかっただけでもずいぶん安心したのです(^^; 一人遊びはやはりまだ英語みたいです.たいしたこと言ってませんが(^^;